死神についての私見


 今日は、死神について、少しお話します。

 実際、私のところにも来たことがあります。あれが。
 体調を崩し、学校の保健室のベッドで寝ていたら、「すっ」とやってきて、私の寝ていたベッドの端にあいつが座ったんですよ。
 そして、顔を私のほうに近づけてきて、私から精気を吸い取るんです。
 自分の体の表面をおおっている、見えない膜みたいなのが、頭の上のほうへ引っ張られ、吸い取られる感じです。吸われるたびに、意識が遠のいたり、呼吸が止まったり、心臓が動くのを拒否しそうになったりするのです。
 その時は、私は、金縛りに陥り、体の自由はありませんでしたが、なんとか精神だけは保ち続けていたので、「生き続けること」に集中しました。
 しばらくそうして、精気をとられまいとしてるうち、運よくチャイムが鳴ったので事なきを得ました。


 私がその時に見た彼は、黒い影でした。鎌のようなものは持っていません。形は人のようですが、顔や、手など、ハッキリした区切りがあるわけでもなく、ただ人の形をした影が動いている感じです。
 あいつが私のベッドのふちに座ったときにはギシっとベッドがきしんだので、もしかすると重量もあるのかもしれません。

 これは私の勝手な意見ですが、死神は、人を殺したりはしないんじゃないでしょうか。
 私が精気を吸われたのは、確かに考えようによっては、私を殺そうとした、というようになるかもしれません。しかし、だったらなぜ、「チャイムが鳴った」程度のことで私の下(もと)から去っていったのでしょうか。
 時々、死神に何かを吸い取られた、というお話を耳にしますが、それで実際に亡くなった方は、生き残っている方より少ないように思います。

 多分、彼らが精気を吸うのは、人間がご飯を食べるのと似たようなものなのかも知れませんね。
「そんなことで人間を殺すのか!」
と思われた方は、私たちが、肉や、魚や、植物を、食べて生きていることを思い出してみてください。私達が口にしているものはみな、もともとは生あったものです。死神達にとっての私達の精気は、私達にとっての他の生物の命と同じなのです。
 そして、私達の場合は、他の生物の命を完全に奪って自分の力としますが、彼らは、命まで奪わないで力を得ているのですから、まぁ、なんともいえませんね。

 もともと死神とは、人を殺しに来るイメージが強いですが、彼らは本当は、ただ単に死に行く人を迎えに来ているだけなんです。死後、その魂を逝くべき場所に、迷わないように連れて行く、それが彼らの仕事だったと記憶しています。

 だから、彼らが姿を現すときは死人が出、彼らは不吉のものと、人間にされてしまいましたが、考えようによっては、皆さんが考えている「天使」のようなもののハズなんですよ。

 天使も悪魔も死神も、紙一重、ということですね。
 ただ一つ言えるのは、彼らがいるからこそ、亡くなった方は迷わずに逝くべき場所へ行ける、それを忘れてはいけませんね。

 ・・・・・・だって、死神が来て亡くなった方は必ず地獄へ行く、なんて、聞いたことないでしょ?ただ、死神は「迎えに来て、迷わないように送り届ける」だけの方々なんですよ。


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