私と「霊」と「紫の人」

 たいしたお話ではありませんが、私がはじめて「霊」というものを見たのは、私がまだほんの物心つくかつかないか位の頃でした。
 正確に言うと、今まで見ていたものは「霊」だったと認識した時、でしょうか。

 小さい時から、私は視界の端にチラチラと彼らを見ていました。彼らを目にするときは、昔は必ず視界の端にチラッとうつる程度で、はっきり正面から見たことは一度もありませんでした。

 ひとりしかいない部屋で遊んでいたら、隣に知らない男の子の足が見えた。でも、振り返ってみても誰もいなかった。
 そんなことばかりでした。

 三歳か四歳の頃でしょうか。家族と一緒に、北海道へ旅行へ行きました。楽しい気分で初めての飛行機から降り、空港を出たところでのことだったと思います。今はもうないかもしれませんが、一つか二つ、電話ボックスがありました。私は、両親と兄の少し後ろを、ひとりできょろきょろしながら歩いてついて行っていました。
 そんな感じで、目が電話ボックスを通過したときです。私は、一瞬遅れて異様なものを見てしまったことに気付きました。

 一つの電話ボックスの中ぎゅうぎゅうに、体を異様にグニャグニャ曲げて無理やり押し込まれたような、細いおじさんが居たんです。
 まるで、長細い小さい箱に、蛇を一匹無理やり押し込めたような形です。普通の人間に、そんな事がありうるでしょうか。あるわけがありません。
 慌てて振り向き、電話ボックスの中を確かめましたが、そのときにはもう見えなくなっていました。
 私はどうしようもなく怖くなって、泣き出しそうな気持ちになりました。

 そのときです。
 後ろから、温かいものが、ふっと私を包んだような気がしました。

「あれはただ、あのおじさんが自分が死んだことに気付いているにも関わらず、○○にこだわり続けていたから蛇のようになってしまっただけのことだよ。
 人間は、あまり一つの物事に固執すると、あんなふうに蛇のようになってしまうんだよ。
 あのおじさんは、あの電話ボックスからは出てこれないから心配しなくていいんだよ」

耳元で、そんな声がしました。

 あぁ、そうか、あのおじさんは死んじゃってるんだ。じゃあ、絵本で読んだお化けって言うやつだ。
 でも、電話ボックスから出れないなんて、しかも昼間から現れるなんて、お化けって絵本で読んだのとはやっぱり違うんだな。自由な生活は送れないんだな。
 白くて、手を下にたらしたのがお化けだと思ってたのに、ちゃんと人みたいなんだ。へぇ〜…。じゃぁ、今まで見てきた「居るようでいない人たち」もお化けだったのかな。

 そんな風に考えた記憶があります(笑

 その後、私がついてこないことに気付いた両親が私を呼びました。
「あぁ、そうだ。」
そう思って振り返ったとき、目の端に、いつもと同じように、紫色の何かがうつりました。
 それが、例の「紫の人」(No.3「管理人さんの質問から…」参照)との最初の出会いでもあります。

 これが、私と「霊」と「紫の人」とのなれ初めですね。




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