ヘルメット         全国

 私は警察に勤めている。交通課勤務なのだが、今も思い出すと手に蘇る感覚がある。

 ひどい事故だった。バイクの単独事故なのだが、何で滑ったのか、直線路であるにもかかわらず猛スピードのまま転倒し、ガードレールに激突した、というものだった。
 別の現場での仕事を終えて、その事故現場に着いたときには、すでに同僚達が一通りの検証を終えた後だった。
 ぐしゃぐしゃになったバイクが横倒しになっていた。
「本当に単独事故か?」
と、思わず同僚に確認したほどの、目を疑うような壊れようだった。
 運転者はすでに病院に搬送されたあとだったが、即死の状態だったという。
「即死どころか・・・・」
と気になることを言うので同僚に問い質したが、言葉を濁すだけだった。

 写真撮影や証拠品の回収を済ませ、現場撤収となった。
 私もいろいろと片付けていたが、ふとガードレールの向こうの草むらに目をやると、運転者のものらしいヘルメットが転がっているのが目に入った。
「証拠品が残ってるじゃないか。」
と舌打ちをしながら、ガードレールをまたいで草むらに下りた。隣に置いてある証拠番号札とともに回収しようと、そのヘルメットを持ち上げようとしたが・・・・・

 それは、ずしっと重たかった

「即死どころか・・・・」
同僚の声が蘇った


念のため申し上げますが、管理人は警察官ではありません。聞いた話です。この話を知り合いの女性警察官に話したところ、ライダーブーツが重かった事はあったと言っていってました。警察官の皆さん、大変なお仕事、ご苦労様です!!