ブラインド        全国
       
       会議は長引いていた。もう深夜と言っていい時間になっている。 
       社屋の5階に位置する会議室では彼を含めた5人のプロジェクトチームのメンバーが顔をそろえていた。 
       
       新製品開発プロジェクトがスタートし、すでに2週間が経っている。しかしマーケティング調査の結果が微妙で、新商品のターゲットの照準を、どの年代に絞るかで議論が紛糾し、まとまらないでいた。 
       社運をかけていると言っていい今回のプロジェクトであるだけに簡単には結論が出ない。しかし、しびれを切らせた上層部からぎりぎりのタイムリミットが言い渡され、なんとしてでも今日中に結論を出し、朝までに上層部を説得できるだけの資料を整えなければならない。 
       最後の決断を下そうとしている課長に、その部屋にいるメンバーの視線が集中していた。 
       彼もまた、課長の虚空を見つめる深くしわが刻まれた顔を注視していた。 
       課長の背後には窓があり、西日を防ぐために夕刻に下げたブラインドは、巻き上げられないまま降ろされている。ブラインドのフィンは完全には閉められておらず、少し隙間があり、窓も開けられているのか、微かな風が吹き込んでいる。その風に課長がくわえたたばこの煙が揺らいでいる。  
       
       ふと彼は窓に目をやった。次の瞬間彼は総毛だった。 
       ブラインドのフィンの隙間に、2つの目があったのだ。 
       ビルの5階。なんの足場もない窓の向こう側の目も課長を見つめていた 。  
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