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泉の広場の女     大阪府

■写真協力 mizuno さん HomePage


 「あれ?またおる。」

 通勤帰りに通る泉の広場(大阪、梅田の地下街の噴水のある一画)に、ここのところよく見かける女が今日もいる。
 年齢は三十前後だろうか。髪は背中近くまであるロングなのだが、手入れされている様子はない。小柄で、顔色は悪い。赤い色のペラペラな生地のワンピースをいつも着ている。その女がうつろな目をして誰かを捜しているかのように、泉の広場の中をフラフラとうろついているのだ。
 目立つ服装とその異様な雰囲気から危ない感じがして、近寄りたくないムードを色濃く発散している。

 「一体何なんや。いつもあそこで何してるんや。」
と、妙に気になった彼は、帰宅後、まさかと思いつつネットで検索してみた。

 ヒットした。

 ネットでは有名な存在らしい。霊として扱われている。
「あほらし。なんであれが霊やねん。イっちゃってる危ないネーちゃんやん。」
興味を失った彼はパソコンの画面を閉じ、ベッドに潜った。

 それから、何となく気になっていたのか、泉の広場を通りかかるたびに目の端で赤い服の女を捜すようになったが、出会わなかった。
 そして10日ほどが過ぎたある日

いた。

 あの女だ。
 噴水の向こう側にいる。
 いつもはふらふらと彷徨うような感じて歩いているのだが、今日は違う。こっちを向いて佇んでいる。
 そして・・・・、女は彼をじっと見ているようなのだ。

 その視線を感じたとたん彼は金縛りにあったかのように硬直し、歩を進めることはできなくなってしまった。
 その女は彼の方を見つめたまま噴水の池の端に沿って歩き出した。
 こちら側へ回ってくるつもりなのか。どんどん彼の方に近づいてくる。
 今までに見たフラフラとした足取りではない。その顔に表情はないが明らかに目的を持った者の足取りでこちらに向かってくる。
 そしてその目的とは彼なのだ。
 彼は女を見つめたまま動けずにいた。
 女の目は真っ黒だった。白い部分がないのだ。眼窩がまるで暗い穴のようにも見える。
 彼の心臓は恐怖に張り裂けんばかりに大きく波打っていた。
 周囲を通り過ぎる人々は、全く、女の存在に気づいていないようだった。全身から禍々しい気配を発散しているにも関わらず、振り返る者すらいない。
 彼はこの女がネットで語られていたとおりに、この世の者でないことを悟っていた。
 2mほどに近づいたとき、女は表情を変えずに口を開けた。口の中も真っ暗だった。そしてぽっかりと開けた口を動かさずに女はしゃがれた声でしゃべり出した。

「どうして私を捜すのだ。
私が捜しているのはお前なのか。」


 意味は分からない。女の口から出た音声なのか、直接頭の中に語りかけられのかも判然としない。
 彼はがたがたとふるえるばかりで何もこたえられない。

 女が更に近づいてこようとしたとき


 ドン


 背後からぶつかってきた若者が
 「こんな所につっ立ってんな!オッサン!」
と言い捨てて立ち去っていった。
 その拍子に彼の全身の硬直は解け、彼は一目散に駆けだした。

                 *****

 あのとき、あの若者がぶつかってきてくれなかったら、どうなっていたのか
 そして、ちらりと見たあの若者の表情が、少しこわばっていたように見えたのは気のせいだったのか
 あの若者には女が見えていて、彼を救うためにわざとぶつかってきてくれたのかも知れないと、あのときのことを思い出す度、そう思う。

 彼は通勤路を変え、泉の広場には近寄らないようにしている。

 


 もともと2chで話題になっていたようです。2ch以外でも「泉の広場 赤い女」で検索すれば、関連の話はたくさん読むことがでます。