東尋坊 福井県
■情報提供 上総さん(福井県 女性)
東尋坊へ観光に来た3人の旅行者が、海をバックに写真を撮ろうとしていた。
1人がカメラを手に、残りの2人がポーズをとっていた。
シャッターを切り、ファインダーから目を離して2人へ視線を移すと、1人がいなくなっているではないか。
落ちた!
2人は真っ青になり、断崖から下を見下ろした。
海は荒れていた。
海水は入り組んだ岩の間に入り込み、大きな波しぶきを上げていた。大小様々な渦が巻き、落ちたら最後、まず助からないという言葉が実感を持って迫ってくる。
絶望に打ちひしがれそうになりながらも、2人は懸命に落ちた男の名を呼んだ。
すると、何と突き出た岩の下から声がするではないか。
恐る恐る身を乗り出し覗き込むと、棚のように更に突き出た岩場があり、消えた男はそこに居たのだ。
地元の人たちの助けで男は救い出され、事無きを得た・・・・
筈だった。
「良かったなぁ。」
まだ、がたがたと震えている男にそう話しかけると、
「ああ。助かったよ。でもな」
「何だ?どうした?」
「俺、誰かに引っ張られたんだ。」
「え?何言ってるんだよ。俺、引っ張ったりしてないぜ。」
男の横で並んで写真に撮られていた男がそう言った。
「もちろんお前じゃないよ。俺を引っ張った奴は、俺の足首をつかんで下に引きずり落としたんだから」
その話を聞いた2人は顔を見合わせ、此処が心霊スポットであることは思い出したが、いくら何でもそんな話は真に受けられる筈もなく、落ちたショックと恐怖で少し動転してるんだろうと、男を慰めた。
***
数日後、旅を終え、写真屋に現像に出して戻ってきた写真を見ると・・・
崖の下から伸びた白い手が、男の両足に絡みつくようにハッキリと写っていた。
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