路面の顔
私は,京都のはずれの峠道でハンドルを握っていた。
うっそうと茂る原生林の中を,道はうねうねと蛇行していた。坂道は急で,アクセルをしっかり操作しないと,カーブでスピードを落とすたびに出口の加速ではエンジンは一息つくぐらいだった。カーブの見通しは木々が邪魔になってあまり良くない。昼間であっても陽はあまり差し込まず,薄暗かった。
それでも谷を挟んだU字カーブの向こうから対向車が来るのは,木々の隙間から確認することができた。白い軽のワンボックスだ。ゆっくりと坂を下ってくるようだった。私はスピードを落としカーブに入った。
「おや?」
確かにいたはずのワンボックスがいない。見間違えか?いや、そんなはずはない。薄暗いと言ってもまだ昼間だ。坂を下ってくる車体をはっきり確認したはずだ。
不思議な気分になりながらも,道は細く,私は運転に集中しなければならなかった。次のカーブはすぐに迫ってきている。ハンドルを切ってカーブに進入し,路面に目を落とした時…
顔があった。
まるで銅像のような黒光りをした顔が路面にあったのだ。
その顔は虚空を睨み、苦悶の表情を浮かべていた。
「あっ」
と思った次の瞬間,車体はその顔の上を跨いで通過してしまっていた。
その後,私の車は何事もなく峠道を抜けることができたが…。この目撃体験は一体何を意味するのだろうか?
※写真は合成です。もちろん本物ではない・・・。しかしまさしくこんな感じだった・・・。
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