走る人影

 私の体験談はいつも私一人の体験であり、「気のせい」で片づくことが多いのですが、先日同じものを二人で同時に見るという体験をしました。合理的な説明が付きません。


 職場の飲み会の帰り。私は同僚の女性が運転する車の助手席にいた。彼女も飲み会に参加したのだが、酒が飲めないため車で来ていた。帰る方向が一緒の彼女の好意で同乗させてもらっていたのだ。その車にはもう一人同方向に帰る同僚も後部座席に座っていた。まずその同僚の家へ向かうため、京都の西にある天神川という川の畔を走り、大きなスーパーのある交差点を右折して東に向かった。そのスーパーが出来て以来、付近は街灯が立ち、以前は暗い道だったのだが今はかなり明るい道に変わっている。その歩道には駐輪場との境にフェンスが設けられている。
 私は少し酔っていたので、ぼうっと前方に目を向けていた。深夜だというのにジョギングでもしているのか、歩道を走る人影を車のヘッドライトが照らし出していた。かなり速いペースで走っている。
「こんなに深夜によく走るなあ。」
と思ったその時、私は、その人影がまさしく影であること、つまり、誰もいないのに影だけがフェンスに映し出されているのだと言うことに気付いた。そして私が気付いた次の瞬間、その影はスピードを上げ、あっという間に見えなくなった。車より速いスピードで走り去っていったのだ。
「・・・変なもん、見てしもた・・・」
私がそうつぶやくと、間髪入れず運転していた同僚が
「やっぱり!?やっぱり見た?!」
と大声を上げたのだ。
「うん。・・・・・・・・影が、走ってた・・・・・。」
「そうやろ!?影!影だけが走ってた!私、気のせいかと思たんやけど、やっぱり見たんや。なんやの、あれ!!」
 彼女はあまりそういった経験がなく、恐怖で顔をこわばらせていた。

 後部座席にいた同僚は全く気付かなかったらしい。しかしその付近に住む彼女の話によると、天神川の畔は、昔から幽霊の目撃談が後を絶たないと言うことだ。やはり、あれは幽霊と呼ばれるものなのだろうか。

 


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