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笑う絵

 私の家には絵が掛けてある。幼い少女がとんがり帽子をかぶって玉乗りをしているかわいらしい絵だ。イラストではなく油彩の本格的な絵画だ。
 その絵、たった一度だけだが笑ったことがある。声を上げて。
 その声を聞いたのは私の妻。昼間台所で家事をしていると、隣の部屋から幼い子どもの笑い声が聞こえたというのだ。
 驚いた妻は背後の和室を振り返った。開け放してあったふすまの向こうに見える部屋の壁に掛けてあったその絵の女の子と目が合った。妻はその絵が笑ったのだと直感したという。
 そのとき私たち夫婦にはまだ子どもはなく、当時住んでいたマンションの部屋の両隣や上下にもそんな小さな子どもは住んでいなかった。また私たちの部屋は五階で、下の道を通る子どもの声とすぐ背後から聞こえる声はもちろん区別が付く。 つまり子どもの声がそんなに間近に聞こえる環境ではないのだ。

 この絵は絵を趣味にしている義兄が描いたものを、私たちの結婚の祝いとして貰ったもので、絵の少女のモデルは彼の愛娘。つまり私の姪で、無論その絵にまつわる妙な因縁話は皆無だ。
 ただ、妻が言うには(妻は少しばかり霊感が強い)住んでいた部屋そのものに、妙な雰囲気はあったのだそうだ。
 そこは築年数のかなり経ったマンションで、私たちの前にも何人もの住人がいた。その過去の住人たちの様々な思いが残り香のようにその部屋に残っていて、それが絵を通して出てきたのかなと、何となくそんな風に考えてる。


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