猫が逝った

飼っていた我が家の猫が逝った。長く飼った猫で、話し始めるとセンチメンタルになりそうなので、事実だけを報告しようと思う。


 もう13歳になっていた。人間で言うと80歳を超えている。だから、そろそろ覚悟をしていなければならない時期になっていたのだが、私たち家族はどこかでたかをくくっていた節があり、「いつまでもいてくれる。」と感じていたようだ。
 そんなはずはないのは分かっているつもりだったのだが。

 その年の夏は暑かったのか、うちで飼ってる3匹の猫たちが例年になくずいぶん夏やせをしてしまった。その内の1匹が10月になってもまだ体重が戻らないので、動物病院へ連れて行くことにした。
 腫瘍ができていた。あと1ヶ月、そう宣告を受けた。
 それからあっという間に衰弱し、診察を受けてから3週間目に逝ってしまった。その3週間は点滴を家で打ったり、薬を飲ませたりといろいろと手は尽くしたのだが・・・。
 明け方3時過ぎのことだった。私は眠っていたのだが、妻の悲鳴で目覚めた。
 苦しみ始めたので、妻が心の中で
「もう苦しむのはやめて、逝く?」
そうたずねると、静かに逝ったそうだ。妻が納得するのを待っていたかのように。立派な最期だと思う。

 夜が明けて、起きてきた子ども達は代わる代わる猫を抱きしめながら泣いた。息子が抱いているとき、猫の声を聞いた。
 しばらくして
「さっき、お兄ちゃんが猫抱いてるときにな・・・」
私がそう言いかけると、娘が
「私も聞いた。声、やろ?」
と言った。
 お別れをしてくれたのかもしれない。

 翌日の夕方、近くの河原で移動火葬車に来てもらい荼毘に付した。
 その時も声を聞いた。炉の中からではなかったので良かったと思う。炉の中から声が聞こえたりしたら冷静さを保っている自信がない。
 私たちのそばで、泣いてる私たちを見てきょとんと首をかしげてる、そんな姿が目に浮かび少しだけ慰められた。


 その翌日、その場所のそばを車で通ったとき、1年以上壊れたままだった車のNAVIのテレビ機能が突然復活した。
 私が死線をさまよったとき、携帯の調子が悪くなり、峠を越えると復活したという経験(不可解な出来事→その他→携帯電話)を思い出した。
 何でもかんでも結びつけて考えるのは良くないが、タイミングがタイミングだけにちょっと不思議な気分になった。
 私にサインを送ってた…とは、考えないことにする。
 そう考えるのはつらすぎる。


体験談大募集!!あなたの体験談を 投稿して下さい
Home