パラレルワールドへの入り口

 半覚醒状態目覚める寸前の半分起きている様な状態に加え、夢を見ているレム睡眠時もここでは半覚醒状態と呼ぶこととする にある時、様々な不思議が起こることはここで何度か触れてきた。
 その理由を考える時、その状態の人の意識は、意識の表層の下に隠れている深い無意識層にアクセス出来ることがあるからだと考えればいいのかも知れない。

 人の意識はそれぞれ独立した単体ではなく、集合的無意識(ユングに端を発する心理学の仮説)と呼ばれる深い無意識層で一つに繋がり、一人一人の個性(意識)はそこから飛び出た突起のようなものだとする考え方がある。
 集合的無意識は全ての記憶を内包するだけでなく、一つの大きな精神体とも言うべきものであり、それは巨大なエネルギー体で、その内部(内部という言い方は妥当でないかも知れないが)は、時間や空間の概念を超越したものであるとされる。
 分かりやすいイメージで言えば、この世に生を受けた時、突起が誕生しそれが個々の意識となる。死ねば意識は消滅するのではなく、その巨大な精神体に吸収され還っていく。
 この考え方に立ち、集合的無意識にアクセスが可能であると仮定すれば、意識が繋がっているのだからテレパシーは容易に説明がつくし、輪廻転生や過去生(前世)の記憶もあって当然なのだろう。時間の概念を超えるのであれば予知もまた説明がつくのかも知れない。
 あの世の概念やアカシックレコードハイヤーセルフといった説は、この考え方の別の角度からの説明だと言っていいのだろう。
 物理学の立場からのアプローチの「超ひも理論」の「たたみこみ」という説に、時間や空間の概念を超えたこの世の全てがたたみ込まれている超ひも(Super Strings)が存在するという考えがあるが、この主張ともかなり似通ったものが感じられる。
 そして、空間の概念すらないのなら、(論理が飛躍しすぎている感もあるが)夢がパラレルワールド(平行宇宙:私たちが住む宇宙と平行して存在するとされる多種多様な宇宙)への入り口であるという主張も一概に荒唐無稽とは言えないのかも知れない。半覚醒の状態でその集合的無意識にアクセスし、そこで見るパラレルワールドの景色が夢に反映されるという主張だ。
 SF的な色が濃い気がする「パラレルワールド」だが、量子論の世界ではかなり真剣に論議され、その存在を主張する物理学者は少なくない。(多世界解釈多元宇宙論等)


 私が何度か見る夢の中に不可解な夢がある。もしかするとパラレルワールドを垣間見てきたのではと思うことがある。

 その夢は普通の生活の一場面。家族と共に過ごす何気ない風景。
 しかし現実の風景とは異なるところも多い。町並みや部屋の様子が微妙に違う。
 もちろん夢はイマジネーションの産物であるから、現実世界と異なるのは当たり前のことで、それを指してパラレルワールドを見てきたのだと論じるつもりは毛頭無い。
 ただその種の夢を見て目覚めた時、いつもではないのだが、拭い去れない現実への齟齬感に包まれることがある。
 その齟齬感はいつも同じで、私の家族にはもう一人いるはずだという妙な思いなのだ。
 現実の私は妻と二人の子どもと暮らしている。しかし夢の中ではもう一人いるようなのだ。
 曖昧な言い方をしているのは、目覚めた瞬間、それが誰なのかが分からなくなってしまうからだ。目覚めればいつも顔形は曖昧模糊となり、私との関係、つまり私の子どもなのか親なのかそれとも兄弟姉妹なのかさえ分からなくなっている。
 ただ、確かにもう一人いたという妙にはっきりとした思いだけが私の中に残る。そしてその思いは、現実世界に対する齟齬感だけでなく、大切なものを失った喪失感さえ含んでいる。
 夢と現実が違うからと言ってそんな感情に包まれることは、私の場合他にはない。

 目覚めて数分たつと、まるで、急に被写体を変えたビデオカメラのピントが徐々に合っていくように齟齬感は薄れ喪失感も霧散していく。
 単なる「寝ぼけ」と言ってしまえばそれまでの話なのだが、もう一つの世界(パラレルワールド)があってそこでは私の家族は5人家族で、夢の中でその生活を見る、と言うより、私の意識はその世界に住む「私」の意識と同化することができるのかも知れない。


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