Reflection(反射)
 

 仕事が忙しい日々が続いていた私は、少し息抜きがしたくなり、いつもとは違う道を通って帰る事にした。
 私の職場は京都市の隣のK市で、自宅のある京都市へは峠を越える必要がある。通常は国道かバイパスを通って帰るのだが、時折、ずいぶんと回り道になる、あまり知られていない細い峠道を帰ることがある。
 その道は急カーブが連続し傾斜もかなり急な道で、もちろん舗装はしてあるが路面状況は悪く、途中、離合が困難なほど細くなる箇所もある。雨の後は落石が心配で、走ろうとはまず思わない。また、街灯もほとんど無い、「山道」という形容がぴったり来る道で、ある時など、道を横切る3頭の鹿を目撃したこともあるような、ほとんど車も通らない道だ。
 それだけに気分転換にはちょうど良く、途中京都市内南部の夜景が見渡せる箇所もあるため、気が向くとハンドルをその道へ向ける。
 いつもは、ちょっぴりスリルを感じる人気のないその道が楽しいのだが、その日はだんだん灯りが少なくなるにつれ、なんだか心細いような変な気分になった。嫌な胸騒ぎもする。
 その道に入ったことを少し後悔し始めた頃、私は妙なことに気がついた。助手席側の窓ガラスに変な光が映り込んでいるのだ。
 初めは車外の街灯が映っているのかと思ったのだが、映り込んでいる場所が全く変わらず、私の車の何かのランプが映っているようなのだ。
 その明かりは、青白く発光していて(このページの画像と同様の色)縦が20cmほどもあってかなり大きく、車内の装備品のパイロットランプなどではない。車内にはそんな色の光を発するものが計器がないのだ。それにかなり明るい。暗いその道では少しまぶしさが気になるほどだ。
 先ほどからの心細さも手伝って、だんだんとその明かりが不気味にも思えてくる。
 しかし道はカーブが連続し、前方を注視しないと運転を誤ってしまうのでじっと見て確認することもできず、やむを得ず私は車を停めた。
 まじまじと見てみたが、何が映っているのかやはり判然としない。カーナビの明かりかと思いスイッチを切ってみたが、変化はない。車内のあらゆる明かりに手をかざしてみたが、結果は同じだった。私の手の影は映らなかった。
 試しに、すべての灯りを消してみると映り込みは消える。点けるとやはり映り込む。点けたり消したりを何度か繰り返してみたが、私の車が発している明かりであることは間違いがない。と言うことは、車外のポジションランプ(車幅灯)かヘッドライトが窓に映り込んでいることになる。
 しかし、そんなことは今まで一度もなかったし、また角度的にあり得ない。運転の妨げになるような明るさで外装品の明かりが窓に映り込むなんて事があったとしたら、それは明らかに設計ミスになる。どう考えてもあり得ない。
 しばらく眺めていてが、結論は見つからず、あきらめて車をスタートさせた。なるべく気にしないように心がけて。
 
 数分後、その峠道を抜け、明るい大通りに出た私は、私を悩ませていたあの光がいつの間にか消えているのに気づいた。あれは一体何だったのだろう。

 同じような経験をお持ちの方があれば是非教えていただきたい。
 ※私の車は、HONDA STREAM (2000年式RN3)である。


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