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窓の外の影         広島県 かわぐちさん(男性)の投稿より

 この記事は私の体験ではなく、恐怖体験として投稿されたものです。
 不思議でも何でもない話なので、掲載を見送っておりました。しかしその怖さは際だっておりましたのでなんとかできないかと思っていました。自分のサイトに不思議ではない話が載せられるこのコーナーがあるということに気付いてなかったのです。
 ふと、自分の日常じゃなくてもいいことに気づき、ここでご紹介させていただくことにいたしました。


 何十年と生きていると、平凡な人生の様でも何度かは不思議な体験をする事はある。その内の一つを紹介する。
 もうかれこれ十年位前になるだろうか。当時、私は離婚し四歳の息子と実家に帰っていた。
 数年前には父も定年を迎えており、私が仕事をしている間は、私の両親が息子の面倒を見てくれていた。しかし、半年に一度位の間隔で父達は海外へ旅行に出かけ、その間は私が仕事を休み息子の面倒を見ていた。
 その日もちょうど両親が旅行に出掛け私は仕事を休み家に居る、そんな日だった。息子を幼稚園に送り届け洗濯や掃除を一通り済ませて、ベッドに横たわり文庫本に目を落としながら時間をつぶしている時だった。
 私の寝そべっているベッドは二階の、かつて私自身が高校を卒業するまで暮らしていた通称「私の部屋」にあるのだが、寝そべった状態で私の足元の方にある窓がガタガタと音を立て始めた。
 私の実家は小さな町の一角とは言え、駅の近くの住宅密集地に存在する。山や林、社寺仏閣、墓等が近くに或る訳では無い。
 住宅地に建つ家と言うのは恐らく何処の町でも同じだと思うが、道に面して玄関が有り、その玄関側に幾分のスペースを取って裏側は敷地一杯に建てられている事が多い。何本かの道が有りその道と道との間に建つ家は、玄関の反対側をまるで背中をくっつける様にして建てられている。私の実家もこうした形で建てられていた。
 二階の窓、それも裏の家に面している窓がそこだけ音を立てる筈は無い。私は気のせいだろうと思いまた本に目を移した。
 暫くするとまたその窓がガタガタと音を立て始めた。さすがに気になりその窓を注視する。
 窓の外に何か居る。
 明らかに人影の様な物が窓の外をフラフラと蠢いている。
 私は部屋の反対側に寄って少しの時間様子を伺った。どうやらその「何か」は外から窓を開けようとしているみたいだ。
 影は窓枠に手を伸ばし何度も何度も窓を開けようとしていたが、諦めたのか少し窓から遠ざかった。
 その時、私は思い切って窓に近寄り鍵を外し、そして窓を開け放った。

 そこに居た。

 2メートル以上有る隣家との距離、しかし実際にはお互いの家の窓の上のひさし等が有り、そういった物と物との距離は1メートル位しか無い。それらを使い、よじ登り私の実家に侵入しようとしていた泥棒だった。

私の顔を見て彼は
「こんにちは!」
そう言って降りて行った。降り際に
「おい!ここは駄目だ!人が居るぞ!」
そんな言葉を、私からは死角になる向こうの、道の方に投げかけながら。

 彼らが退散してくれて笑い話の様な展開で終わってくれて良かった。空き巣では無く、もし強盗も厭わぬ様な連中だったら、今頃私はここでこんな事を書いていられなかったかも知れない。