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赤いプレリュード    京都府〜滋賀県

 宇治川ラインと呼ばれる道がある。琵琶湖から流れ出た蛇行する瀬田川が深い渓谷を穿ち、 その川沿いに伸びるその道は適度なカーブが連続する。
 ちょっとしたスリルが味わえるので人気のある道だ。 近年は、無謀な運転をするライダーが増加したため、夏場は二輪車は通行止めとなっている。
 しかし私の若い頃はそんな規制もなく、よくバイクで走りに行った道だ。 そして私自身もその道で奇怪な体験をしたのだが(※「視線」参照※)、実は、この道にはいくつかの都市伝説もある。


 彼はその道を車で走るのが好きだった。
 深いカーブを軽くカウンターを当てながら、狙った通りのラインで走り抜けることができた時の爽快さがたまらない。
 排気量は小さいがエンジンのふけがよい彼の車は、小気味よくカーブを抜けていく。
 たいていは深夜に一人で走りに来ることが多かった。対向車のライトがカーブの反対側からでも確認できるので、昼間走るより安心だと思っていたのだ。近頃は、ブラインドカーブ(見通しの悪いカーブ)でも平気でセンターラインを割ってくる命知らずのライダーが増えたので、ますます昼間は走りにくい。

 彼自身も制限速度を守って走るようなタイプではないが、最低限のルールを守るのは当然だと思っていた。だからセンターラインを割ってくるようなバイクはもちろんだが、対向車があるのに平気でハイビームで走ってくる車があると腹がたって仕方がない。
 特に今日は、助手席に彼女を乗せている。二人だけの空間を無遠慮に照らし出すその車に、彼はいらつきながら2度3度とパッシングを繰り返していた。

「なんやあの車は!ライト下げろっちゅうねん!」

 その場所は宇治川ラインの中でも数少ない長い直線路である。だからそのハイビームに眉をしかめなければならない時間が長い。
 低くて幅のある車体でホンダのプレリュードだと言うことが分かる。
 彼はその車とすれ違うとき、その運転席を睨みつけた。
 サイドウィンドウからプレリュードのドライバーもこちらを睨んでいた。目つきの鋭い「ヤンキー」だ。

 助手席の彼女が小さく悲鳴を上げた。
「見た!?今の!!」
「あ、ああ・・・・。」

 彼らが見たそのヤンキーの顔は、血に染まっていた。プレリュードの赤いボディーと同じぐらいに真っ赤だった。

 スピードを落とし、車を停めた彼はルームミラーを見上げた。すれ違ったそのプレリュードも停まっていた。
 そして次の瞬間、赤い尾灯の内側の後退灯が白く点灯したかと思うと
ウゥーーーーン ウゥーーーーーーン
と言う後退時の甲高いエンジン音を響かせながら迫ってきたのだ。
 彼はあわてて、ギアをローに入れ急発進した。
 いくら排気量が違うとはいえ、バックで走るのとではスピードは比べものにならないはずである。
 しかし赤い尾灯はどんどん迫ってくる。
 谷川沿いの深いカーブが連続した道なのに!
 カーブの手前、仕方なく少しスピードを落とすと
ウゥーーーーン ウゥーーーーーーン
と言う音が聞こえるほど接近してくる。
 焦って深くアクセルを踏み込んでも、その距離は開かない。
 ずっと、ついてくるのだ。
 ずっと・・・・・・・・・・。


 この話のバリエーションで、HONDAのフォー・ワンと言うバイク(4 into 1と言う集合管を付けた古い名車)に乗った首のないライダーとすれ違うと言う話もある。こちらはついてくることはない。